5次元恋愛小説 「時空を超えた恋物語」第一話

5次元恋愛小説
「時空を超えた恋物語」第一話

パタン………音がフロア中に響くようにパソコンを閉じる。

エレガントな仕草でないのは分かってる。

それでも、そんな振る舞いをすることで

今日は定時で帰りますよっていうアピールになるの。

 

そうしないとチームメンバーから呼び止められて、

競合への対応策や、新規プロジェクトのアイディア出しに

付き合わなくちゃいけなくなるから。

オフィスビルを颯爽と出て、

まっしぐらな気持ちで東京駅まで向かう。

足取りはスキップしているかのように軽やか。

だって今日は1ヶ月に1回のデートだから。

私はこの日を楽しみにして仕事を頑張ってるの。

東京駅に到着して、慣れた足取りで長野行きの新幹線へと滑り込む。

窓際の席について、ぼんやりと景色を眺めながらコーヒーを一口。

 

それから彼に到着時間をLINE送信。

「シンジおつかれー。

 19時15分着の新幹線だよん」

「お疲れー。時間、了解。

 早くレイコをギュギュってして、チューしたい」

速攻で彼から、甘くてキュンとするようなLINEの返信が来る。

LINEを読むだけで、愛されてることが実感できるの。

 

次第に一気にハートの鼓動が高まっていく。

それを彼に伝えたくて、

ハートいっぱいのスタンプ送る。

すると彼から、

ハートがもっといっぱいのスタンプが届く。

半年前から、シンジと秘密の恋愛が始まった。

でも出会いは、学生時代から……。

 

大学で知り合い、同じゼミにも所属していて、

あの頃は一緒に飲みに行ったり、旅行に行ったりしてた。

 

お互いに恋愛を意識しない関係だったから何でも話せる信頼関係があったな。

卒業してから彼は実家の会社がある長野に戻って、私は東京に残った。

だからやりとりは自然とSNSだけになって行った。

お互いの投稿にいいねしたり、コメントするのだけが続いていた。

そんな私達がまた頻繁に連絡を取り合うようになったきっかけは、

彼がSNSで代表取締役に就任することを報告した投稿記事。

 

2代目として、決意表明にあふれたパワフルな記事だったな。

その投稿にお祝いコメントをしたのと同時に、

個別にメッセージでお祝いメッセージを送ったの。

「シンジー、社長さんだねー!

 おめでとう!

 すごいねー。

 どっかのタイミングで

 シンジのお祝いしたいな」

「レイコ、サンキュー。

 まあ、ワンマンで有名だった親父から

 引き継いだ2代目だからさ、

 これからが大変だよ。

 

 それにしても久々だな。元気にしてる?

 いつも投稿見てるよ。

 相変わらずキレイだなって思って、

 写真に見とれてる。

 レイコも大活躍だな。

 あんな大手企業のマーケティング部だろ?

 カッコイイな」

「ありがとう。今は営業事務とマーケティングの兼任なの。

 大変だけど仕事は好きなんだよねー。だから旦那のことは放置かな。

 仕事に夢中なダメな奥さんよ」

「そうなんだ。うん、仕事は面白いよな。

 まあ俺も、子ども二人を

 奥さんに任せっぱなしよー。

 

 ウチなんて同居だからさ、

 ホントはフォローしてやらないと

 奥さんストレス溜まるんだろうなって。

 

 頭では分かってるんだけど、

 ついつい仕事しちゃうんだよな。

 レイコは子どもいなくて

 旦那さんと二人暮らしだっけ?

 夫婦二人でカフェで

 リモートワークしてる自撮り写真、

 旅行先の風景写真、

 すっごい絵になってるよ。優雅だな」

「ありがとう。子ども、授からないから

 ウチは諦めちゃって、

 そのぶん夫婦で贅沢してるの。

 シンジは、大家族だね。なんか憧れるな」

「そうか?なんだかお互いに

 真逆な夫婦関係だな。

 そうだ、来月あたり東京に

 仕事の接待に行くんだ。軽く飲もうぜー」

「えー、東京来てるのー。

 嬉しいなー。シンジと飲むの楽しみー」

そんなLINEのラリーであっという間に

東京での再会が決まった

 

続く・・・

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