小説 「ラブストーリーは桜の季節に」  第1話

2020年 春に発表しました

小説を再びお届けします^0^

 

小説

「ラブストーリーは桜の季節に」

 第1話

この季節の川沿いの道、

ここは地元では桜の名所。

この季節は桜がほころび始めるから

ゆっくり歩きながら眺めたい。
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だから、いつもよりも早起き。
最寄りの駅までの道のりくらい、

ゆっくりと優雅に季節を感じながら歩きたい。

けれどもそんなことを思うのは私だけかもしれない。
ふと周りを見ると、平日の朝は慌ただしく歩く人ばかり。

そんな住宅街の平凡な風景に一人、

他の人とは少し違う男性の後ろ姿を見かけた。
どうやら桜を撮影しているみたい。

男性が横向きになった。シャッターを切るその姿は様になっているなと眺めていると、
どこか見覚えがある面影…….思い出した。

高校時代のクラスメイトのシュンだ。
すると私の視線を感じたようで、彼がこちらをみた。
そして、私を思い出したようで

ニコッと笑いながら手を振りながらこちらに歩いてくる。

「あれーミズホ?久々だね。これから仕事?」
「シュンこそ。地元に戻ってきたの?

  噂には聞いてるけれど、有名なカメラマンになって

  世界中を旅してるって」

「いや、有名じゃないって。

  俺は普段は雑誌の撮影して、

ある程度お金が貯まったら、

 世界中あちこち飛び回って

 好きな写真を撮るっていう
気ままな生活してるだけ。

今は桜の季節でしょ。
だから、日本に戻って来て

 桜を撮ってるんだ。

まずは、地元からって感じで今、撮影してる。
来週は日本中あちこち撮影旅行しようと思ってる」
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「へー、いいな、自由って感じで。

 私は普通に会社勤めだよ。これから出勤なんだ」

「そう?ミズホもいい感じだよ。

 OLって感じの雰囲気とファッション、似合ってるよ。
俺さ、ファッション誌の撮影してるから

 女性の服装は細かく見ちゃうんだよねー。いいよ、うん、いい」

彼は私の全身を眺めて、大きく何度もうなづいた。
そんな風にじっと見つめられるとドキドキしてしまう。

高校時代に片思いしていた

シュンに見つめられるなんて夢のよう。

「あのさ、今度の土日って暇?なんかさ、

 桜だけ撮影してても味気ないから女性も一緒に撮影したいなと
 思っていたところで。ミズホのイメージ、

 ここの桜にぴったり合うんだよな」

モデルなんて経験ないし、シュンに撮ってもらうなんて恥ずかしいし無理だよ……と、
いきなりの話に戸惑ってしまった。
彼が私の戸惑いを察したようで、話を続け始めた。

「モデルって言っても、俺のインスタくらいに

 しか載せないからさ。気軽に考えてよ。
   あとさ、悪いんだけどモデル代は

  撮影終わった後の食事代くらいしか出せないんだ。


もしそれでよければ。これ、俺の名刺。

 裏にLINEアドレスもあるから、

よかったら連絡ちょうだい。
呼び止めてごめん」

そう言って、私に名刺を渡して来た。

 嬉しさと戸惑いでいっぱいの気持ちだった。
彼と別れ、急いで最寄り駅まで向かい満員電車に乗る。

ギュウギュウに押されながらいつもの日常が始まった……
というため息混じりな感覚もあるけれど

シュンとの再会、モデルの話………

新しい何かが始まってるという感覚が芽生えていく。

迷ったけれど

撮影モデルを思い切って引き受けることにした。


LINEでそのことを伝えると、撮影は今度の土曜日にあの川沿いとなった。

撮影当日までの打ち合わせのLINEが彼からたくさん来る。
「あのさ、手持ちの服をいくつか写真送って。

 あと、近所のカフェで休憩取りつつ、衣装替えもするから
 2、3着は準備して」

思ったよりも本格的な指示にドキドキしながらも、洋服の写真を送る。
そして、彼が指示した洋服を準備していく。

「ミズホ、ファッションセンス良いよ。

  撮影、上手くいく」
私の緊張を解きほぐすようなLINEメッセージ。
そのメッセージを何度も読み、ふんわりと嬉しい気持ちが溢れていく。

明日の20時に第2話発表です^^
 

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